病院内で辛いプログラムや治療に耐え、不安や寂しさの中で退屈を伴い過ごす子どもたちと付添う保護者を対象に静岡県立こども病院でミニコンサートを開催しました。
前回は玄関入って右側にあるフリースペースに上がって行いましたが、今回はその左側の元々椅子があった場所で、バイオリニストの丸尾さん、ピアニストの良知さんに演奏していただきました。
開催日は週明けで翌日は祝日ということもあり、早い時間帯から患者さんが多くいらっしゃいました。
演奏が始まるとピッと顔を上げて、リズムに合わせてお子さんの手をとって揺らしたりする親御さんや、正面の階段を降りていた親子は演奏が始まると、降りるペースがゆっくりになったりして、音楽を楽しんでくれている様子でした。

お母さんに抱っこされた赤ちゃんは、音楽にすごく興味を持ってくれている様子で、演奏中はリズムに合わせて体を揺らしたり、音の方を指差してお母さんに教えていたり、演奏が終わるとパチパチ上手な拍手をしてくれました。曲が始まると、親指をグッと「いいね!」のポーズ(そう見えただけかもしれませんが)をしていたりして、とても可愛らしかったです。1歳、1歳半くらいの子に見えましたが、すでに音楽が好きなんだろうなと思えるくらいにすごく楽しそうに聞いてくれていました。
5歳くらいの女の子は、じっと両手を合わせてお願いするようなハート型のポーズで真剣な表情で聞いてくれていました。曲が終わるたびに拍手をしていたのですが、曲が終わる前から拍手の練習をお母さんの方を見ながらしていて、そのやりとりが微笑ましかったです。


ピアノの方に走り出しちゃう歩き始めくらいの年齢の子もいました。
お母さんもその子が見えるように近くの席に居させると、その場でリズムを取ってダンスの飛び跳ねたり手を叩いたりして可愛らしかったです。近くにいた看護師さんもニコニコお母さんと一緒にその子を見ていて、暖かな空間でした。
お揃いの服を着た三姉妹は、入ってくるとすぐ演奏の近くの席に三人揃って座りました。その席はちょうど受付が前、演奏が後ろになるように配置されていたので、楽器の方を向いて背もたれに顎を乗せ、おんなじポーズで聞き始めました。その様子がすごく可愛らしく、その子たちのお母さんも思わずスマホを取り出して、その子達が聴いている姿ごと撮影されていました。
タンゴの曲が流れると、2番目の子が急に立ち上がって受付に並んでいるお母さんの方へ。「この曲電子ピアノにのってたよ」と受付にいるお母さんに、小声で嬉しそうにちょっと自慢げにそれだけを報告しに行っていました。お母さんに伝えなきゃ!というふうに立ち上がったのがとても可愛かったです。


演奏の終わり頃に近くに座った親子。最後の曲は中島みゆきさんの「糸」でした。
お母さんは途中から何かが溢れたようにハンカチで目を拭っていました。小学校中学年くらいの娘さんがどうしちゃったのといった表情でお母さんの顔を覗き込んで、でもそれが悲しいとかの涙じゃないことは分かっている様子で、お母さんも大丈夫だよと伝えて、ハンカチをあてていました。
今、その子がこの病院に通っている病状や状況や、抱えているもの、ここに至るまでなど私には知りえないですし計りえないことですが、きっと音楽だから寄り添えたものがあったんだろうなと思います。
前回と今回、こうしてこども病院で音楽会を開くことができて、確かに楽しんでくれている、聴いてくれているんだろうなと思う瞬間に立ち会えて本当に良かったなと改めて感じました。演奏終了後、撤収の準備をしていると「よかったです」とお礼を言いに来てくださった方もいらっしゃいました。
